最近ゲームから離れていたけれど、何か面白いものはないかと探しているあなたへ。本作の基本情報と、どんなゲームだったのかを簡潔におさらいし、この後のレビューへの土台とさせていただきます。
まずは知っておきたい基本情報と概要の整理
基本データ

| 項目 | データ |
| タイトル名 | リズム天国 ザ・ベスト+ |
| 発売日 | 2015年6月11日 |
| メーカー | 任天堂 |
| 当時の価格 | 4700円(税別) |
| ジャンル | リズムゲーム |
| 内容の概要 | 過去作(GBA/DS/Wii)のリズムゲームと新作を合わせて100種類以上収録。初めてストーリーモードが導入され、操作の簡略化も図られた携帯機向けタイトル。 |
ゲーム内容と特徴
本作はニンテンドー3DS用ソフトとして、携帯機で再び『リズム天国』を作りたいというプロデューサーのつんく♂さんの意向を受けて開発されました。
最大の魅力は、ゲームボーイアドバンス版の初代からWii版までの過去作と、多数の新作を合わせた100種類以上のリズムゲームが収録されている点です。
シリーズが続くにつれてゲーム内容が複雑になってきたという反省から、今回は初めて遊ぶ初心者の方でも入りやすい仕組みが取り入れられています。例えば、複雑なボタン操作を必要とするゲームも、すべて同じタッチ操作で遊べる「かんたんタッチ」という操作方法が追加されました。
また、これまでのシリーズにはなかったストーリー要素が導入されていることも特徴です。これは、リズムゲームの合間に物語を進めることで、ゲームクリアが難しくて途中でやめてしまうプレイヤーのモチベーションを維持するきっかけになればという意図がありました。
さらに、やり込み要素として、ゲームの結果表示が従来の評価(ハイレベルなど)に加え、100点満点のスコア表示に変更されています。
開発の裏側から一点だけ(興味深いエピソード)
本作では、初心者の方がリズムを体で覚えるためのサポートとして、練習時に下画面にタイミングを視覚的に表示する「お助けリズム表示」という仕組みが導入されました。
この親切な機能が生まれたヒントは、ある体験イベントでの観察に基づいています。
ディレクターの米さんによると、以前、新作ゲームの体験会で『リズム天国』を遊ぶ小さなお子さんが苦戦しているのを見かけた際、横にいた説明員の女性が、その子の肩をトントンとたたいてリズムのタイミングを教えていたそうです。この、人から人へリズムが伝わる「肩ポン」という行為が着想となり、ゲーム内でも視覚化してタイミングを伝える仕組みとして、練習時に採用されることになりました。
あの頃の「ピコ」という音、そして――「リズム天国 ザ・ベスト+」と向き合った一人の時間
ゲームから少し離れていた時間が、私の指からリズム感を奪うには十分だったようです。今回、満を持して手に取った「リズム天国 ザ・ベスト+」。これは、アラフォーになった男が、失われた感覚を取り戻すための、個人的なリハビリの記録と言えるかもしれません。
膨大なレビューサイトが語るような、網羅的な評価はここにはありません。ただ、私の心が確かに揺さぶられた点、そして、どうしても拭えなかった小さな違和感を、正直に書き記していこうと思います。
絶賛したい点①:記憶に刻まれた「効果音」という名の原体験
このゲームを起動し、ストーリーを進めていこうと最初のボタンを押した瞬間、私は思わず膝を打ちました。あの「ピコッ」という、少し気の抜けた効果音。それは、初代のゲームボーイアドバンス版から何一つ変わらない、まさしく「リズム天国」の音でした。
この音を聞くたびに、私はただのプレイヤーから、このゲームの世界の住人へと変貌を遂げるのです。グラフィックがどれだけ進化しようと、新しいキャラクターがどれだけ増えようと、この根幹を成す効果音の心地よさこそが、シリーズの魂を継承している証左なのだと確信しました。
それは単なるノスタルジーではありません。プレイヤーの行動に対する、最も純粋で、最も的確なフィードバック。この音があるからこそ、我々は目をつぶってでもリズムを刻むことができる。キャラクターのかわいらしさや、コミカルな演出も、この盤石な土台の上にあるからこそ、一層輝きを増すのです。
絶賛したい点②:理屈を超えた「なぜか」の魅力

「なぜ、カメレオンと不良なのだろうか?」
本作で追加された新作リズムゲームの一つ、「カメレオン」をプレイしながら、私の頭にはずっと、この素朴な疑問が浮かんでいました。舌を伸ばして虫を捕まえるカメレオンと、リーゼントを揺らす不良。そこに論理的な繋がりなど、おそらく存在しないのでしょう。
しかし、不思議なことに、何度もプレイを重ねるうちに、この突拍子もない組み合わせが、まるで長年連れ添った相棒のように、しっくりと馴染んでくるのです。バックで体を揺らす「マキネコ」たちを見ても同じことを感じます。「君たちが手伝った方が薪割りは早く終わるんじゃないか?」なんて野暮なツッコミは、この世界では無意味なのです。
理屈で考えるな、感じろ。このゲームは、そのバカバカしいとさえ思える世界観を通して、我々が普段いかに頭でっかちに物事を捉えているかを、優しく諭してくれているのかもしれません。この「なぜか分からないが、面白い」という感覚こそ、他のどのゲームにもない、「リズム天国」だけが持つ中毒性の源泉だと私は思います。
どうしても気になった点:共有を阻む「協力プレイ」の壁
本作には、家族や友人と一緒に遊べる「協力プレイ」モードが搭載されています。これは素晴らしい試みですし、私も家族で大いに楽しみました。しかし、楽しみつつもそこには小さくない不満点が存在したのです。
それは、協力プレイで遊べるステージが、あらかじめ決められた数コースの中からしか選べない、という点です。例えば、ある特定のステージを一緒に遊びたいと思っても、それがコースの4番目に配置されていた場合、そこに至るまでの3ステージをクリアしなければなりません。
これは、プレイヤー間に腕前の差がある場合に、致命的な障壁となります。慣れないうちは、目的のステージにたどり着くことさえできず、気まずい空気が流れてしまう。せっかくの「協力」が、いつしか「足の引っ張り合い」という苦行に変わってしまう瞬間がありました。
なぜ、すべてのステージを自由に選ばせてくれなかったのか。この一点が、本作を手放しで称賛することを、私にためらわせるのです。

分かってっけど、ノリ感がないと合わせられねんだヨぉ!
総評:音楽の記憶を呼び覚ます、個人的な祝祭
多くの欠点を補って余りある魅力が、このゲームには詰まっています。特に、つんく♂氏が監修し、自身の歌声も収録されているという事実は、作品に一層の深みを与えています。困難を乗り越え、これほどの熱量が込められた作品が今ここにある。その奇跡を噛み締めながらプレイする時間は、何物にも代えがたいものでした。
もし、あなたがこのレビューを読んで、少しでも本作に触れてみたいと感じたなら。まず、たった一つでいいので、ボーカル付きのステージの動画を探して、その曲を聴いてみてください。
本作のボーカル曲は、一度聴いたら忘れられない、強い印象を残します。そして、そのメロディを口ずさめるようになった時、あなたはもう「リズム天国」の虜になっているはずです。ゲームを始めるのは、それからでも、決して遅くはありません。

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