ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3Dの基本データ
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D』のレビューを書こうとして、いきなり手が止まりました。遊んだのは間違いない。当時、新品で買っている。なのに、頭から出てくるものが、やたらと偏っているのです。
| 発売日 | 2012年5月31日 |
| メーカー | スクウェア・エニックス |
| 機種 | ニンテンドー3DS |
| ジャンル | RPG |
| 当時価格 | 5,490円(税込) |
| スタッフ | ゼネラルディレクター: 堀井雄二/モンスターデザイン: 鳥山明/音楽: すぎやまこういち |
1998年にゲームボーイで出た『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』のリメイクです。主人公はテリー。旅の扉の先に広がる世界を歩き、モンスターをスカウトして仲間にし、2匹を配合して新しいモンスターを生み出しながら育てていく。歴代のドラクエで戦った顔ぶれが、こちら側の駒として並ぶ。それだけの話なのですが、それだけで何十時間も溶けます。
ゲームの何が記憶に残るのか。長いこと、私は絵だと思っていました。派手な画面ほど後まで残るのだろう、と。
間違いでした。発売から14年たったいま、このソフトについて私の中に残っていたのは、メロディです。それも1曲。配合表は1行も出てきません。強いモンスターの名前すら怪しい。残っていたのは、フィールドを歩いているときの、あの少し寂しい音だけでした。
モノクロ画面が立体で動いた、あの日
ゲームボーイ版は、中学の頃に友達から借りて遊びました。借り物のくせに、こちらのほうが本気でした。クリアまで行って、そのあとも配合を調べ続けて、神竜だのダークドレアムだのを自分の手元に並べていった。あの手順は、いまでもぼんやり指の側に残っています。
当時はインターネットが普及し始めたか始めていないかという頃です。情報源は雑誌と、教室の口伝えでした。モンスターごとに割り振られたコストの上限内でチームを組む大会が誌面に載っていて、それに出ようとしている友達がいた。いま思えば、あれは相当に面倒な情報の集め方です。面倒なのに、全員が妙に楽しそうだった。
そんな記憶を抱えたまま、3DS版の電源を入れました。モノクロの、せいぜい数十色しか出ていなかったあの画面が、立体で動いている。素直に声が出ました。すごい、と。
その感動は、たぶん最初の30分で使い切りました。

人間の目というのは薄情なもので、立体で動くモンスターにはすぐ慣れます。慣れたあとに残るのは、結局そのゲームがどう遊べるかであって、何色出ているかではない。私がグラフィックを本質だと思わなくなったのは、たぶんこういう体験を何度か積んだからです。彩ってはくれる。土台にはならない。
逃げるか、触りに行くか——歩き方が変わった
それでも、この3DS版レビューで先に褒めておきたい変更点があります。エンカウントです。
ゲームボーイ版はランダムエンカウントでした。しかも遭遇率が高い。あの頃の私は、体力の残りとにらめっこしながら、1歩ずつ恐る恐る歩いていた記憶があります。歩くこと自体がリスクだった。
3DS版はシンボルエンカウントになりました。モンスターがフィールドを歩き回っていて、ぶつかると戦闘が始まる。これだけで、歩き方が丸ごと変わります。避けて先へ進むのか、あいつが欲しいから正面から当たりに行くのか。プレイヤー側に判断が生まれた。探索という行為が、ただの移動から選択に変わったわけです。
ハードの進化というのは、こういうときに効いてくるのだと思います。画面がきれいになりました、ではなく、処理できる情報が増えたぶん、遊びの構造そのものを組み替えられる。モンスターを集めて育てるというこのゲームのコンセプトに、この変更はきれいに噛み合っています。
人のモンスターを、横から掠め取る
旅の扉の奥には、他国のマスターがいます。話しかけると戦いになり、勝つとアイテムをくれる。ここまでなら、ただのボーナス敵です。
面白いのは、その相手が連れているモンスターを、こちらがスカウトできることです。
これがいい。よその誰かが手塩にかけて連れ歩いている個体を、横から声をかけて引き抜く。仕組みとしては単なるスカウト成功判定なのに、相手がいるというだけで欲の質が変わります。野に生えているものを採るのと、人が持っているものを欲しがるのとでは、心の動き方がまるで違う。私はだいたい、後者のほうが強く反応します。

そうやって集めた2匹を、レベル10まで育ててから配合する。生まれてきた1匹を、また育てる。この往復が、このシリーズの背骨です。強くなる過程が全部こちらの選択でできている。だから、出来上がった1匹に対して「これは自分のものだ」と言い切れる。
モンスターは、こちらを襲ってこない
改めて遊ぶと、モンスターがとにかく大きい。パーティの枠は4つですが、Mサイズは2つ分、Gサイズは3つ分を食います。強いやつを1匹入れた瞬間、残りがすかすかになる。この不便さが、妙に納得できるのです。デカいんだから場所を取る。当たり前の話が、ちゃんとルールになっている。
そして、これだけの巨体がフィールドをうろうろしているのに、彼らはテリーに襲いかかってはきません。こちらが触れるまで、彼らはただそこを歩いている。現実の理屈で考えれば、あの体格差で不意を突かれたら1発です。
疲れを知らない体で歩き回れて、歩いた分だけ確実に強くなっていって、そのくせ死の匂いがしない。ゲームの世界というのは、ずいぶん都合よくできている。子供の頃、私はこの都合のよさを言葉にはできていませんでしたが、たぶんそこに行きたかったのだと思います。いまも大差ありません。あちら側に住みたい。
テリーの次は、ビアンカとフローラだそうです
ここで少し脱線します。このシリーズ、主人公の選び方が毎回うまい。
1作目がドラクエ6のテリー。2作目のイルとルカだけがこのシリーズ生まれ。3作目がドラクエ4のピサロで、2026年に発表された4作目はドラクエ5のビアンカとフローラです。4作あって、オリジナルは1組だけ。初めて出すシリーズは本編キャラの力を借り、当たったから自前のキャラで勝負し、時間が経ってからまた本編の顔を持ってくる。並べると、判断の跡がくっきり見えます。
で、その「本編の顔を出せば戻ってくる客」というのが、どう考えても私のことです。テリーが主役だと聞いて中学生の私が食いつき、いまもビアンカとフローラの名前で反応している。まんまと引っかかっている側の人間が、偉そうに人選を分析している。
ちなみに私は、ドラクエ本編は7で止まっています。途中で止まっています。人選を語る資格が、そもそも足りていません。
覚えていたのは、フィールドの音だけだった
さて、冒頭の話に戻ります。私がこのゲームから14年持ち歩いていたもの。フィールドのBGM「果てしなき旅」です。
少し寂しい旋律で、ゲームボーイのあの音源で聴いても、3DSの音で聴いても、同じ景色が立ち上がる。歩いている自分の視界ごと出てくる。ヘッドホンで聴き直すと、主旋律の裏で鳴っているものまで届いて、3DSの時点で音はもう相当なところまで来ていたのだと分かります。
いちばん長く聴く曲というのは、そのゲームの評価そのものを左右すると思っています。フィールド曲が肌に合わなければ、ゲーム全体の印象まで持っていかれる。重厚である必要はなくて、覚えられるか、口ずさめるか。そこだけです。
子供の頃、中古で買ったファミコンのドラクエ4を起動したら、前の持ち主のデータが第5章の序盤で残っていました。勇者とマーニャとミネアの3人しかいない状態です。あのとき流れていた「勇者の故郷」の、心細い感じ。仲間が全員そろうと「馬車のマーチ」に変わるあの設計も含めて、いまだに頭の中で再生できます。ついでに言うと、そのデータについていた勇者の名前まで覚えていて、私はいまでもその名前を使うことがあります。
絵は上書きされます。音は、なぜか居座る。テリワンのゲームボーイ版と3DS版、私の中では画面がまるで別物なのに、鳴っている音は地続きでした。リメイクが何を受け継ぐべきかという話をするなら、私はここを推します。

総評
★★★★☆ 集めて、育てて、掛け合わせる。その1本の線を邪魔しない作りになっています。シンボルエンカウントと他国マスターからのスカウトで、ゲームボーイ版の「歩くのが怖い」は「歩くのが楽しい」に置き換わりました。大人でも遊べるかと言われれば、むしろ大人向きです。1回の遊びが短く切れて、続けると深い。
推奨アクション: まず押し入れの3DSが起動するか確認してください。当時遊んだ人は、タイトル画面より先にフィールドまで進めてみることをおすすめします。音で全部戻ってきます。当時を知らない人は、最初の旅の扉をひとつ抜けるところまで。そこで他国マスターのモンスターを1匹引き抜けたら、もう戻ってこられません。
それにしても、神竜もダークドレアムも自力で作り上げた男が、14年後に持って帰ってきたのが鼻歌1曲というのは、我ながらいい荷物の減らし方だと思います。しかもさっきから、その鼻歌が止まりません。
いま『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D』を遊ぶには
中古で探すなら、下の4つから。相場はおおむね1,000〜2,500円(2026年8月6日時点)。

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