『くるくるカメレオンDS』の基本データ
くるくるカメレオンDS のレビューを書くつもりで電源を入れて、開始10秒で私は鳴き声に躓いた。カメレオンが、猿の声で鳴いたのである。2006年のDSソフト、対戦型の陣取りパズル。説明書付きの中古を1本、手に入れた。

| タイトル | くるくるカメレオンDS |
| 機種 | ニンテンドーDS |
| 発売日 | 2006年10月12日 |
| メーカー | スターフィッシュ・エスディ |
| ジャンル | 対戦型パズル |
| 当時価格 | 4800円(税別) |
| プレイ人数 | 1〜2人(DSダウンロードプレイ対応) |
盤面は七色のコマで埋まっている。自分の色を選び直すと、隣接している同じ色のコマが自分の領土に変わる。それだけ。相手がいま使っている色は選べない、という縛りが1つあるきりで、ルールはこれで全部だ。自分の領土が50%を超えたら勝ち。ほかに、大きなキングのコマを囲って奪うキングルール、旗の立ったマスへ先に到達するレースルールがある。ジャングルに暮らすカメレオン4姉妹と、その母親が戦う。私が選んだのは末っ子のディルピスだった。
カメレオンは、猿の声で鳴く
タイトル画面でスタートボタンを押す。すると「キーッ」と鳴った。
猿である。どう聞いても猿の声だ。押すたびに猿が鳴く。カメレオンというのは、こんな声で鳴く生き物だっただろうか。図鑑で確かめたことはないが、少なくとも私の頭の中のカメレオンは、無言でゆっくり目玉を回している。それが決定音のたびに絶叫する。
キャラクター紹介を開くと、ハエが好きだとか、コオロギを食べるとか、そういう話が並んでいる。4姉妹の名前はエボシ、エリオット、クレスト、ディルピス。並べて眺めると、どれもカメレオンに由来がありそうな響きばかりだ。たぶん、なんとなく。服の色や柄も、それぞれの見た目に寄せて作ってある。そこは丁寧なのだ。丁寧なのに、鳴き声だけが猿だ。
この時点で、私は完全に舐めてかかっていた。陣取りだろう。相手の色を読んで、先に潰せばいい。パズルの盤面を睨むこと自体は、そこそこ長くやってきた自負がある。根拠は特にない。
色は読める。爆弾は読めない
1戦目。お互いに50%付近で膠着した。47%と46%。泥試合である。
読み合いとしては、悪くない手応えだった。相手が次に取りたい色を先に自分の色にしてしまえば、相手はその色を選べない。この「相手の一手を1色ぶん奪う」感覚は、確かに気持ちがいい。ルールが単純なぶん、狙いがそのまま盤面に出る。ここまでは、私の想定どおりだった。
問題は爆弾だ。
盤面に爆弾を含んだマスがあり、それを取ると周囲が吹き飛ぶ。吹き飛んだあとの地形が、そのまま勝敗を決める。ところが、その爆風がどこまで届くのかが分からない。見た目からは判断できず、規模も一定に見えない。だから私は、爆弾のマスに手を伸ばすたびに祈ることになる。パズルゲームの最中に、祈っている。
そして厄介なことに、勝った試合を思い返すと、盤面を切り開いたのはいつも私の読みではなかった。ぜんぶ爆風だった。膠着してどうにもならなくなり、半ばやけくそで爆弾を取り、たまたま大きく開いた側が勝つ。私が「ここだ」と思って刺した手ではなく、私が「もう知らん」と思って押した手のほうが効いている。
勝てんわ。これ、勝てるゲームになってないぞ——と、私は何度か声に出して言った。正確には、勝ててはいるのだ。勝てていないのは、私が思っていた勝ち方のほうだった。
くるくるカメレオンDS の難易度をどう見るかは、この一点にかかっていると思う。実力差を運が引っくり返せる、と言えば聞こえはいい。事実、能力の差があっても逆転の目は残る。ただ、それは同時に、こちらが積み上げた読みも同じ爆風で消えるということでもある。歯ごたえで勝負する設計なのか、運の振れ幅で盛り上げる設計なのか。私の腕では、その狙いを最後まで掴みきれなかった。
掛け声は、両者とも一つきり
もうひとつ、地味に効いてくるものがあった。ターンが回ってくるたびに、キャラクターが掛け声を出す。これが1種類しかない。しかも自分だけではない。相手も1種類だ。
陣取りは1ターンが数秒で終わる。つまり数秒おきに、同じ声が交互に鳴り続ける。20分も遊べば、その声は耳ではなく背骨のあたりに溜まってくる。せっかく声を収録しているのだから、あと2つか3つあれば、それだけで印象がまるで変わったはずだ。惜しい、と思う。惜しいと思うということは、私はこのゲームに何かを期待していたということでもある。
対戦の合間には、姉妹の会話が挟まる。平成のノリ、としか言いようのない、少し寒い掛け合いだ。立ち絵の枚数はさほど多くなく、会話も頻繁ではない。だからキャラクターに愛着が湧く前に、次の盤面が始まる。パッと出て、少し喋って、さっと消えていく。名前も服の色も作り込んであるのに、その先が薄い。
そのかわり、2画面の使い方は素直だった。盤面は基本的に上下方向へ伸びていく。DSの2画面という縦長の窓に、進行方向がそのまま重なっている。これは移植ものにありがちな「とりあえず下に何か置きました」ではない。ここは良かった。
ゲーセン仕込みだと断定した、その根拠と外れ方
プレイ中、私はある確信を深めていた。これはアーケードのゲームだ、と。
根拠は2つあった。1つは会話シーンのフォントで、DSの画面に対して最適化されている感じがしない。もう1つは、必殺技を使うときだけ現れる10秒のタイマーだ。普段、色を選ぶときには制限時間などない。じっくり考えていい。それなのに、技を使うと決めた瞬間だけ秒読みが始まり、間に合わなければ技は不発のまま流れていく。この落差は、家庭で1人で遊ぶ人間に向けた設計とは思えなかった。後ろに次のプレイヤーが並んでいて、コインを入れさせる仕組みが要る場所の呼吸だ。
ゲームセンターから、そのまま降りてきたに違いない。私は断定した。
——順序が逆だった。
調べると、このシリーズは2006年1月にPSP版が出て、アーケード版はその後の3月稼働、DS版は10月である。据置の筐体が先にあって家庭用へ移されたのではなく、携帯機のほうが先だった。私が「ゲーセンの手つき」と呼んでいたものは、あとから業務用へ持っていくときに付いた匂いなのか、最初からそういう作りだったのか。どちらにせよ、私の断定は的を外している。
読みが外れる、というのはこのゲームで既に何度も経験していた。ただ、盤面の外でまで外すとは思っていなかった。
5人しかいないのに、必殺技はかぶっていた
ストーリーモードを一通りクリアしてから、私は説明書を開いた。攻略を先に見ると自分で考えなくなるので、この順番は自分で選んでいる。選んでいるのだが、開いてみると、先に読んでいれば分かったことがいくつも載っていた。
必殺技の詳細もそうだ。私の使っていたディルピスの技は、ブロックを1つ消すだけのものに見えていて、実際は☆コマを集めると効果範囲が広がる。そして、そもそも選べない場面が多かった理由も、読めば見当がついた。プレイ中の私は「なぜ選べないのか」を延々と首をひねっていた。
ただ、その説明書がまた、面白い。キャラクター紹介の文面が、ゲーム内で読める紹介とほぼ同じなのだ。せっかく紙があるのだから、もう少し掘り下げてほしかった。技の一覧を眺めていると、登場するのは4姉妹と母親の5人、技は全部で10個。それなのに、かぶっている。同じ技を2人が持ち、3人が持つ技まである。主人公格のエリオットに至っては、他のキャラが使える技だけで構成されている。汎用の主人公、ということなのだろう。5人で10個なら、かぶらせずに済んだ気もする。ついでに、三女と四女の並び順が逆になっていた。普通は上から順に説明する。
粗い、と言ってしまえばそれまでだ。ただ、この粗さは手抜きの粗さではなく、盤面のルールを先に完成させて、そこへキャラクターを後から肉付けしていった順番の粗さに見える。まずパズルを作り、それに合う姉妹を考えた。だから盤面は迷いなく、周辺が薄い。順番が透けて見えるゲームというのは、案外きらいではない。
総評
ルールはひと目で飲み込める。読み合いは確かに存在する。そのうえで、勝負を決めるのは爆弾の広がり方だ。奥へ潜っていく楽しみを期待すると肩透かしを食うが、1戦が短いので、DSを開いて2、3戦して閉じる、という遊び方には合っている。大人が本気で唸るゲームかと言われれば、そこは正直に首を傾げる。
推奨アクション: 見かけたら、説明書が付いている個体を選んでほしい。技の効果と☆コマの関係を先に知っているかどうかで、1戦目の顔つきが変わる。そして誰か1人捕まえてほしい。DSカード1枚で2人対戦ができる(DSダウンロードプレイ対応)ので、相手の色を封じ合う面白さは、CPU相手より確実にそちらで立ち上がる。
私はというと、いまだにあの猿の鳴き声が耳から抜けない。読みで勝ったつもりの試合を思い返しても、決め手はぜんぶ爆風だった。20年前のカメレオンに、運のほうが強いですよと言われて、うるさいと言い返せないのが、いちばん悔しい。
いま『くるくるカメレオンDS』を遊ぶには
中古で探すなら、下の4つから。ブックオフ公式オンラインの中古価格は792円(2026-08-12時点・在庫切れ)。流通量が多いソフトではないので、店とタイミングで振れる。

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