『メトロイドプライム ピンボール』の基本データ
中古で『メトロイドプライム ピンボール』を買った。モーフボールになったサムスがそのまま銀色の球になり、台の上を跳ね回る。ピンボールである。それ以上でも以下でもない。最初はそう思っていた。

| タイトル | メトロイドプライム ピンボール |
| 機種 | ニンテンドーDS |
| 発売日 | 2006年1月19日(北米は2005年10月24日) |
| 発売元 | 任天堂 |
| 開発 | フューズゲームズ(イギリス) |
| ジャンル | SFピンボールアクション |
| プレイ人数 | 1〜8人(DSダウンロードプレイ対応) |
| 周辺機器 | DS振動カートリッジ対応(日本版は同梱で発売) |
テーブルを渡り歩いてミニゲームをこなし、ボスを倒し、アーティファクトを集めていく。1プレイは3球。上下2画面が縦につながって1台の筐体になる。DSでこれをやる理由が、起動して30秒で分かる作りだ。
ピンボールで終わる理由は1つしかない。球が下に落ちるからである。
だから私は、落とさない打ち方くらいは分かっているつもりでいた。根拠は特にない。
1球目がよかった日の話を、私は自分でしていた
最初にきちんと終えたプレイのスコアは669,930点だった。テーブルは2つしか開いておらず英語のミッション名も最後まで読めていない。それでも一区切りついたときには「意外とむずいな」と言うだけの余裕があった。1回のプレイがだいたい10分で終わる。短い。私のように隙間の15分を握りしめてDSを開く人間には、この長さが、そのまま買う理由になる。
あるとき球を弾きながら私はこんなことを口に出していた。ワンプレイ目のスコアがめっちゃ良かったら恐ろしいほどあっという間に2球目と3球目が終わるやつな。ピンボールを触ったことのある人間なら誰でも知っている法則である。私はそれを、自分の口で、自分に向かって言っていたことになる。
3分で終わった。
回を重ねるごとにスコアは減っていってる。そう言いながら次を始めてまた減った。5000点で1球落とし、次で落とし、気づけばファイナルボールの表示が出ている。数字はきれいに右肩を下げていった。定量的に観測できる成果というのは下がるときも同じ精度で下がるのだ。
最低プレイ保証、という言葉が口から出た
球を撃ち出すと台の下の穴の手前にバリアが1本走る。フォースフィールドという。落ちかけた球はこれに弾かれてもう一度台の上へ戻ってくる。3球すべてにかかる保証で、序盤の何もできない時間に落ちて終わる事故を、設計の側で先に潰してある。
最低プレイ保証って感じやな。触っている最中にそう口から出た。
ピンボールという遊びは、上手い人と下手な人で持ち時間が10倍ちがう。3秒で終わる人がいて、10分粘る人がいる。同じ料金で。同じ台で。ゲーセンの筐体はそれを平然と受け入れていたが、携帯機に移すなら話は別だ。電源を入れて3秒で終わってしまったソフトを人が2度目に開くことはない。バリアはそこを塞ぐために置かれている。ミニゲームの案内が日本語で下画面に出るのも1プレイが10分で畳まれるのも同じ方向を向いている。歯ごたえを削らずに底だけを上げる。難易度の調整としては、私は、このやり方をかなり買っている。
『メトロイドプライム ピンボール』の難易度は、クワガタ1匹で決まっている
底が上がっているならあとは自分の腕の話になるはずだった。ならなかった。台の中ほどに虫がいる。
トライクロプスという。3方向に割れた大きなアゴを持っていて、見た目もそのままなので、私はずっとクワガタと呼んでいた。こいつの正面に球が入るとアゴで掴まれる。体力が1つ減る。そのあと台の下まで運ばれて、左右のフリッパーのちょうど真ん中めがけて置かれる。
殺意ではない。事務である。
掴んで、運んで、置く。手順が決まっていて途中に感情がない。しかも置いてくる先が左右のフリッパーの真ん中なので、返す手立てがどちらの指にも残らない。バリアで底を上げてもらった分をこいつが1匹で回収していく。あいつ、あいつ強えよ。掴まれるのが嫌で遠くから撃つと当たった球が跳ね返ってそのまま穴へ一直線に落ちていく。クワガタ恐ろしい。サムスを掴んで潰さないだけ可愛らしいもんか。そこまで言っていた。
最初に30万点あったプレイを終わらせたのもこいつである。腕が落ちたわけではない。虫に運ばれただけだ。

私は英語が読めなかった。オプションを開くまでは
ミッション名は英語で流れていく。ちょっと英語が読めまへん。そう言いながらそのまま遊び続けた。アーティファクトが何なのか、最後まで分からなかった。
それからなんとなくオプションを開いた。字幕のオンオフという項目があった。オンにした。
日本語が出た。
これ字幕そういうことか。間の抜けた声が出た。ミッション名も、いま何を要求されているのかも、全部下の画面に日本語で書いてある。読めなかったのではない。読める設定を開いていなかっただけである。歯ごたえのあるゲームだと思っていた分のいくらかは、私が自分で足していた歯ごたえだった。

アメリカの筐体と、海外で売れる女戦士
遊んでいる間ずっと日本のソフトを触っている気がしなかった。鳴っている音がロックというかヘビメタというか、とにかく重い。効果音の派手さも、画面の色の濃さも、こちらの標準からずれている。多分これ日本が作ったもんじゃないだろうな。そう声に出していた。
当たっていた。開発はイギリスのフューズゲームズである。
組み合わせの理屈は分かりやすい。ピンボールは海外のゲーセンに筐体が並んでいた遊びでメトロイドは海外で強い看板だ。その2つを重ねて、北米では2005年の秋に、日本ではその翌年の1月に出ている。順番からしてこちらが本場のあとを追っている。
最初は別にメトロイドでなくてもいいだろうと思っていた。球を弾く遊びに看板を貼っただけではないのか。考えが変わったのは球が壁を蹴って上がっていったときだ。ウォールジャンプである。しかもこれは説明書ではなく放っておいたときに流れるデモプレイで覚えた。ああいうのは大事だ。ミサイルが撃てて、ボムが置けて、勢いがないとダメージが通らない。メトロイドはこちらの動きをしっかり追ってくる。ピンボールの物理と、あの世界の理屈が、ちゃんと同じ台の上に乗っている。これはメトロイドだった。
165万点で、私は自分の記録を1回だけ超えた
最後になって、テーブルを移りながら、ようやく粘れるプレイができた。ビートルブラストで的をまとめて撃ち、アーティファクトをいくつか回収し、100万点を超えたあたりでエクストラボールが増えた。残機が1つ増えるということだと思う。最終スコアは165万点。台に表示されていた100万点の目標に対してちょこっと超えたくらいのプレイである。
それでも自己ベストではあった。下がり続けていた数字が、最後に1回だけ上がった。上がった理由は腕ではなくクワガタの正面を通らずに済んだ運のほうだと思っている。
ちなみに私の手元に振動カートリッジは無い。日本版は振動カートリッジ同梱で売られていたが、中古で買った私の手元には、ソフトが1枚あるだけだ。振動を足せるのはDSとDS LiteまででDSi以降はカートリッジを挿す口そのものが無い。台が震える状態でこれをもう1回やったら165万はたぶん軽く超える。そういうことにしておく。
総評
1プレイ10分で畳めて、それでいて台の理屈は深い。短時間で満足でき長く触るほど手が分かってくる。私がゲームに求めている両立がこのソフトにはある。おまけに2画面を縦につないだ縦長の台という形が、DSという機械の都合と、ぴったり合っている。画面と画面の境目にフレームが挟まるのは機構上どうしようもないがそれを引いてもこの形が正解だ。縦持ちの画面で遊ぶピンボールは、いまのスマホでも、十分に成立するはずである。
推奨アクション: メトロイドを遊んだことがなくても問題ない。私も初代を触ったきりだ。買ったらまずオプションを開いて字幕をオンにして、それからマルチミッションを選ぶこと。この2手順を先にやるだけで最初の1プレイが私より有意義になる。中古の値付けは強気なので、振動カートリッジ同梱かどうかは、説明文をよく見たほうがいい。
バリアには最後までお世話になった。虫に運ばれた回数のほうは数えていない。
いま『メトロイドプライム ピンボール』を遊ぶには
中古で探すなら、下の4つから。相場はおおむね3,700〜9,300円(2026年8月27日時点・駿河屋の振動カートリッジ同梱版)。

コメント